11月11、12日に開かれる「全国協同集会」まであと2ヶ月。実行委員会の代表委員の5人のうち3名の皆さんに、集会への思いを語り合っていただきました。(日本労協新聞2006年9月5日号より)
【出席者】
- 森友謙氏: 1970年から神戸市職員労働組合・副委員長を務める。86年委員長に就任。2002年から神戸労協代表理事に。
- 辻寛氏: 1988年兵庫県生活文化部長寿社会政策局長に就任。同県企画部長、理事、出納長を経て2001年に兵庫県社会福祉協議会会長。
- 菅野正純氏: 1980年全日本自由労働組合本部書記・中高年雇用福祉事業団全国協議会事務局員として入植。日本労協連副理事長、協同総研主任研究員などを経て、2001年より日本労協連理事長。
- 司会:藤田悠紀夫氏: いま「協同」を拓く2006全国集会in兵庫実行委員会事務局長
藤田(司会) 今年の協同集会の代表委員には、日本労協連の菅野理事長、協同総合研究所の中川理事長、神戸労協の森友理事長に、神戸大学名誉教授の野尻先生、兵庫県社会福祉協議会の辻会長が加わっていただきました。今日は、辻さん、森友さん、菅野さんのお三方に、協同集会への問題意識を語り合っていただければと思います。最初に協同集会の歩みを菅野さんから…。
協同集会の歴史と兵庫で開かれることの意義
菅野 協同集会は、私たちが労働者協同組合という方向を明確にする中で、1987年にいろいろな方々に呼びかけて「プレ集会」を開いたのが最初です。バブルの真っ最中だったのですが、「地域には、人びとが協力して、よりよい仕事やくらしを自分たちでつくりだしていく『協同』の運動が芽吹いている。そうした取り組みを担う人びとが一堂に会して、交流し、現代における『協同』の意味を考えてみよう」という趣旨でした。
以後、ほぼ2年に1度、集会をやっていく中で、「協同」とは「生命・労働・地域」に関わる根本テーマだと思うようになりました。1995年、阪神淡路大震災の年の、私たち労協連の総会スローガンを、「生命・労働・地域の再生――非営利・協同のネットワーク」としたのも、協同を問い続けた結果でした。
この数年、金もうけ至上主義や猛々しい競争賛美が猛威をふるってきましたが、今年になって、耐震強度偽装や米国産牛肉問題、ライブドア、村上ファンドへの捜査などの事件が相次ぎ、他方では「偽装下請け」など、働く人の使い捨て、「ワーキングプア」(働いても働いても貧困から抜け出せない人びと)の問題が深刻化しています。日本社会は大きな反省期にさしかかっているのではないでしょうか。
そうした時期に、兵庫で開かれる協同集会は、この集会の歩みの中でも、かつてなく根源的に「協同」を問い、拓いていく集会になるだろうと考えています。
「現代の貧困」テーマに理解を深める兵庫社協
藤田 辻会長に集会の代表委員をお引き受けいただいたことも画期的なことで、感謝しております。
菅野 兵庫県社協は、地域型の福祉をリードされている社協として有名ですね。
辻 大して変わったことをやっているわけではないんですよ。
兵庫県社協では、毎年夏、「社会福祉夏季大学」を開催しているのですが、今年は「現代の貧困」をテーマに行うことにしました(「いのち・くらし・地域を見つめなおして――現代の貧困問題と地域福祉課題」)。
ニートやフリーターの増加で、将来必ず困難な問題が起きてくると思います。現代の貧困をメインテーマに、セーフティネットとしての生活保護のあり方にも議論が及ぶことを期待しているわけです。
菅野 辻会長は、阪神淡路大震災のときは何をしておられましたか?
辻 私は当時、県の企画部長をしておりましたので、そのまま、復興本部の責任者に命じられました。半年間、家に帰りませんでしたね。
しかし、もう11年経ちました。このあいだ、当時の笹山神戸市長と話をしていましたら、神戸市役所の中でも震災の経験がもう風化している、もう一度あの地震が来たら、同じ混乱を繰り返すのではないかと心配されていました。
時代の変化―フリーター300万人、進む高齢化
森友 震災からの立ち上がりの問題では、ハード面においてもすべてうまくいったのかと言ったら、そうでない面もありますからね。
ただ、この協同集会をやる上で、重要なことは、いま、すべての面にわたって、時代がものすごい勢いで変わっていることですね。
たとえば、経済的な貧困の問題でも、フリーターが三百数十万もおるし、その人たちをいったいどないすんねん、という問題がある。一方では、高齢社会が進み、少子化の問題が出てきている。
こういう中で、どう考えて、どう対処していくのか。いろいろな人の悩みをいっぺん一つにまとめて、どう解決をしたらいいのか。こういう方向で行こうじゃないか、ということが提起できたら、今度の集会はいいんじゃないか。
藤田 そうですね。
森友 経済的な貧困だけでなく、ものすごい精神的な貧困が進んでいますからね。
たとえば、神戸を見ても、かつてつくられた新しい団地が、ものすごく高齢化してしまって、コミュニティを維持するのがむずかしい。一つの行事をやろうとしても、若い人がいない。近所の面倒をみることもできないような状況が出てきている。そんな中で、コミュニティをどうつくっていくのか、議論をしなければならない。
現状を意識化し、みんなが共通の認識を持っていかないと、問題は解決しませんから。
契約社員や偽装請負が増加する労働の現場
菅野 その上で、コミュニティの再生のために、考えられるあらゆる工夫を実行していくことですね。その点で、労働組合も、企業内だけの運動から様変わりしようとしている。連合や労福協(労働者福祉協議会)が取り組んでいる、「ワンポイント・サービス」もその一つで、労組の組合員だけでなく、地域の人びとの、仕事や暮らし、福祉の問題についての相談を総合的に受け、いろいろなところにつなぐ構想です。労協としても、そのネットの中に入って貢献していきたい。
森友 日本の企業は、たとえばトヨタのように、季節工や社外工、契約労働者を入れて、やってきたんですが、最近はさらに偽装請負などで、儲けを大きくしている。そういう中で労働組合も、そうした全体像を見ながらどうしていくのかということが、社会的責務として問われている。
菅野 朝日新聞で偽装請負についてのキャンペーンがやられましたが、キャノンの大分工場で、昼食を水とパンだけで済ましているというような実態が報じられていますね。
藤田 キャノンのはひどいね。
この集会の準備で回って勉強になったのは、ハローワークに行ったとき。そこでは、失業者の相談を受けている職員が、契約社員。あと1ヵ月したら自分の契約が切れる、と心配しながら、人の就職相談を受けている。漫画みたいな話です。
森友 国が「指定管理者制度」をやれと言ったら、自治体でどんどんそれをやって、公共の業務が荒廃してきているという問題もあるしね。
地域の中に入り込むことの難しさ
辻 最初の話にあった孤独死とか、社会的な孤立という問題ですが、私のところで一緒に仕事をしている民生児童委員連合会が、「災害時に一人も見逃さない運動」を、今年の重要テーマとして取り組んでいるんです。
ところが、これは都市部でとくにひどいんですけど、団地などでは、「私の存在を知られたくない」ということで、国勢調査も拒否するような方がいる。そもそも民生委員の仕事というのは、管内を全部知っていることが前提なんですよ。
もう一つ、これは「個人情報保護法」の誤った運用だと思いますが、行政が障害者の情報――障害者がどこにいるか、一人暮らしの人かどうかなど――を一切出さない。そうしておいて、何かあったときだけ「民生委員はどうしておったんや」という話でしょ。
藤田 私も高齢者生協の助け合い・支え合い活動の一部として、復興住宅の訪問をしたんですが、ほとんど戸をあけてくれないんですね。人の心の扉をあけることが至難の業になっていることを痛感しました。
菅野 「介護予防」でもそうですね。家に閉じこもって出てこない人をどうやって引っ張り出すのか。それなしには予防のしようがない。労協がやっている「生きがい型デイサービス」や「地域懇談会」は、人が集まり身近なところからコミュニティを再生していく工夫だと思っています。
労働の現場と地域の結びつきが原点
藤田 最後に、協同集会への期待をひと言。
森友 全国交流の中で、いまわれわれがどんな状態に置かれているのか、認識を一致させるだけでも意義があると思うよ。
菅野 コミュニティ再生の方向をどう見出していくか。あわせて労働の現場、職場のあり方ということが大きい。むしろそこから問題がつくられているという感じですから。
藤田 労働の現場と地域の結びつきという問題が原点のところですね。
菅野 長期的に見たら、経営者にとっても劣悪な労働しか残らないような、こんな使い捨てをやっていたら…。
森友 精神的な荒廃が起きてしまう。
菅野 そうですよね。競争させて創造性が生まれるとは、とても考えられない。人間、協同しなければ知恵も出てこないのでは。その意味でも、金もうけ優先は転換期に来ていると思うんです。
藤田 そういう期待に応えられる集会にしましょう。本日はありがとうございました。
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